卒研生向け
生体における糖鎖の役割を明らかにすることを目的として、研究を行っています。ショウジョウバエ個体やES細胞、iPS細胞、癌細胞において、様々な遺伝子工学の手法を用いて、糖鎖関連遺伝子の発現を調節して、糖鎖機能の解明をしています。また、一部の遺伝子については、ノックアウトマウスを作製し、解析を行っています。最近は、糖鎖不全に起因する遺伝性疾患の解析もはじめました。
以下の(1)-(3)に関連するものから、各自の卒業研究テーマを設定したいと考えています。いずれも、発生生物学、幹細胞生物学、細胞生物学、生化学、分子生物学にまたがるテーマです。
(1) ショウジョウバエの変異体やRNAiノックダウン体を用いた糖鎖関連遺伝子の解析;生物種を越えて保存されている糖鎖の生物活性の解明
ショウジョウバエは、最も遺伝学の進んでいるモデル実験動物です。「生物種を越えて保存されている糖鎖の生理活性」に焦点を置いて、ショウジョウバエの糖鎖関連遺伝子の機能を解析しています。ノックダウン体や変異体の表現型の解析や生化学的分子生物学的解析から、生物の発生における糖鎖の役割を明らかにしていきます。特に、(A)造血幹細胞の維持と分化、恒常性の維持に必要な糖鎖、(B)神経の軸索区画化という新規な現象に必要な糖鎖構造と区画化のメカニズムについて解析を行なっています。
(2) マウスとヒトの多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)における糖鎖機能の解明
(1)で明らかになった糖鎖機能や作用メカニズムがヒトや他の哺乳動物にも共通するものであるか、ES細胞を中心とした培養細胞で検討していきます。具体的には、ES細胞やiPS細胞を対象に、「糖鎖の幹細胞の未分化性維持や分化における役割を解明する」することを目的とします。このプロジェクトでは、2008年に『ES細胞の維持に糖鎖が関与する』ことをはじめて明らかにし、世界の様々なサイトで紹介されました。現在までに、(1)ヘパラン硫酸、(2)ラックダイナック糖鎖構造、(3)O-GlcNAc糖鎖構造が、ナイーブなマウスES細胞の維持に必要であることを明らかにしています。多能性幹細胞の2つの発生段階が異なる状態(ナイーブ状態とプライム状態)、さらには、その間の遷移や状態の決定に関与する糖鎖など、幹細胞の異なる状態の規定に関わる糖鎖の解析を行っています。
(3) PAPS輸送体ノックアウトマウスの機能解析
PAPS輸送体は、糖鎖やタンパク質の硫酸化に必須であり、これがないと各々の分子は硫酸化修飾を受けられません。私達は、2003年にこの遺伝子を初めて単離・同定しました。現在、ノックアウトマウスを作製して、そこで見出された様々な異常における硫酸化糖鎖の解析を行なっています。
大学院生向け
大学院における研究テーマも、基本的に卒業研究と同じで、以下の(1)から(3)に含まれますが、その内容をさらに深めるものとなります。4年生で行う卒業研究のテーマを発展させて、修士、博士の研究を行なっています。すなわち、4年生で学生さんにやってもらうテーマーは、発展させれば、修士、博士の研究になるものを設定しています。
(1) ショウジョウバエの変異体やRNAiノックダウン体を用いた糖鎖関連遺伝子の解析;生物種を越えて保存されている糖鎖の生物活性の解明
(2) マウスとヒトの多能性幹細胞(ES細胞やiPS細胞)における糖鎖機能の解明
(3) PAPS輸送体ノックアウトマウスの機能解析
進路情報
整理中です。終わり次第、お伝えします。